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「ちえの輪倶楽部」は、音楽教育家・北村智恵を中心とした、ピアノ指導者サークルです。
音楽セミナーやイベント、コンサートを企画・運営、またピアノ指導者のネットワークづくりを行っています。

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東北関東大震災-メッセージ  北村智恵

 あれから十日経ちました──。
 逃げるために、湾岸線から全速力で突っ走る車。そのあとを、まるで生き物のように、黒い泥のような津波が追いかけ、家も畑もなぎ倒し、まさに映画のワン・シーンと見まがうような東北地方の映像が、テレビのどの局でも、実際のニュースとして放映され始めた、あの日から、──もう、十日も経ってしまったのです。
 あれから十日も経っているのに、少なくとも私自身は何もできていないことを今、とても辛く思っています。幼稚園の卒園式で人が大勢出入りするので、「義援金箱」を持って行ったことと、卒園児への「お祝いの言葉」の代わりに、今回の震災と津波のために、幼稚園の建物や園バスだけでなく、父母兄弟を失った子どもたちがたくさんいるということや、暖房もない寒い場所で食べるものもなく、家族の行方や安否すら分からず、辛く悲しい思いを耐えている子どもたちがたくさんいるということ、そして今、自分たちは、無事で、多くの人たちに祝ってもらって、予定通りの卒園式を迎えることができ、そのうえ、もうすぐ、明るく元気な一年生になれるという幸せ、また何より、飢えや寒さを体験しなくてすんでいることへの感謝、加えて、悲しく辛い思いをしている人たちの気持ちを分かち合える優しさや思いやりを持ってほしいということ、──これらのことごとを、幼児に解る言葉で143名の卒園児たちに伝えたこと...
 この十日間で、私は、たったこれだけのことしかできませんでした。
 知人、友人、ちえの輪倶楽部の方がたに、電話が繋がらなかったこともあり、可能な相手のみにメールで安否を問うことだけで精一杯でした。瓦礫を片づけに行くことも、炊き出しに参加することも、怪我や病気の人の介護をしに行くこともできていません。体力もなく、時間すら自由にならない自分は、こんなとき何て無力なのだろう、と、本当に辛い思いで一杯です。
 16年前、私は阪神大震災を体験しました。余震が終っても、恐くて、ひと月以上、いつでも逃げられるように、大きなテーブルの下で、服を着たまま仮眠状態で毎日、夜明けを迎えていました。それでも、テレビのニュースで、神戸の悲惨な状況を目にするたび、「近隣の私たちに何ができるか」を考え、震災直後から音楽仲間を集めて、チャリティ・コンサートを企画し開催してきました。「始めなければ始まらない」というタイトルで1年間、そして「続けなければ続かない」というタイトルで9年間、合わせて10年間、計34回のチャリティ・コンサートを開催し続け、両親を失った子どもたちの進学資金に、と限定して神戸のあしなが育英会に十年間、贈り続けました。被災遺児にとって、「教育」が一番大きな「生きて行く力」に繋がると考えたからです。当時46歳だった私は、夫や仲間たちと共に、本当に震災直後から直ちにそのように動けたのに、今、そういうことすら直ちにはできません。そして、それは、今の私の年齢のせいではないと思います。阪神大震災のときも「未曾有の」と形容された災害でしたが、今回のあの「大津波」は、神戸や新潟の大震災を遥かに超える、まさしく「未曾有」の大災害であり、加えて、今の段階でどうなりつつあるのかさえ判らない原発事故のことを思うと、阪神大震災のときのように、単純に「今すぐ義援金づくりのチャリティ・コンサートを!」と発想することのできない気持ちでいることだけは確かなのです。それが今の私の正直な気持ちです。それくらい今回のことは大きなショックでした。
 今、自分に何ができるのか、何をするべきなのか、私にできること、私の仲間とできること、音楽にできること──真剣に向き合い、考えています。
 一日も早く、安全で安心な日々がやってきますように、その日まで、被災された方がたと、心を共にして歩みたいと考えています。
 音楽は、一般に、「衣・食・住」に比べて、必需品ではないと思われがちです。確かに、テレビのニュース等で現状を目にする限り、暖房器具や電気、灯油、毛布や防寒用衣類、そしてすべての人びとに満腹してもらえる食事の提供も急務です。それでも敢えて言うなら、一個のおにぎりが一人の人の命を救うのと同じくらい、一曲の、心のこもった音楽が、人の心を癒やしたり励ましたりするのも事実なのです。
 私と同じように、音楽を仕事としている皆さん、そして音楽を愛している方がた、こんなときこそ、音楽の力を信じて、音楽で繋がり、音楽で支えあい、音楽することで立ち上がり、前を向いて、共に歩む一歩を踏み出しましょう! 少なくとも私は、音楽そのものの力と、音楽することで繋がってきた皆さんのことを、共に生きて行く仲間として心から信じています。
 そしてそういう「音楽の底力」を、こんなときこそ伝えあいたいのです。
2011年3月21日
北村智恵




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