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「ちえの輪倶楽部」は、音楽教育家・北村智恵を中心とした、ピアノ指導者サークルです。
音楽セミナーやイベント、コンサートを企画・運営、またピアノ指導者のネットワークづくりを行っています。

ちえ先生とわたし

一冊の本とのであい

 十年近く前、私は、自分自身の体験から、生徒たちに、先生やCDの物真似でない、その子一人一人の個性を生かした演奏ができるように育てたい、と思い、その指導方法を試行錯誤していた。そんな時、フラッと入った楽器店の書棚に「子どもの眼の高さで歌おう」という本を見つけた。まるでそこだけにスポットライトが当っているかのように目に入ったのである。家へ帰るのも待てず、電車の中で貪るように読んだ。深い感銘を受けた。こんなに一生懸命一人一人の子供やその父母と向き合って教えていらっしゃる先生はいるだろうか。小さいからといって決して見縊らないで、その子にあった教材や曲を選び、方法もそれぞれに違う。私の本当にやりたかった、求めていたことと同じだった。まさしく衝撃的な出会いであった。理想であって、できっこないと決めつけていたことを智恵先生はなさっていたのだ。すぐにでもお会いして教えて戴きたいと思ったが、神様の悪戯か実際にお目にかかるのには時間を要した。
 4・5年経った頃だったであろうか。NHKテレビの人間ドキュメントという番組で 「シルバーエイジの今からピアニスト」 が放映された。年を重ねた方の演奏は、お一人お一人のそれまでの人生が醸し出されていて、胸に熱いものがこみ上げてきた。時を前後して、先生の講座を受ける機会に恵まれた。想像していた以上の意義深いものであった。それ以後、指導者のための月一回の講座に入れていただいたが、指導者というより、私自身、はじめっからやり直したかった。智恵先生の勉強量のすごさにはただ驚き、感服するばかりであると同時に、自分の怠慢に反省しきりであった。そんな中でも少しずつ自分の生徒のレッスンに先生から学んだ事を取り入れていった。
 発表会の事も大変参考になった。「リトルピアニストのつどい」。ステージには、グランドピアノがぽつんと一台。発表会によくあるお花など一切なし。演奏が始まる。一人一人背筋をピーンと伸ばしニコニコしてステージの袖から現れ、ゆったりと正面に向かって 「一生懸命演奏します。どうぞ聴いて下さい。」 と言わんばかりに優雅にお辞儀。演奏はまるで、そのお子さんの日常というか、性格が目に浮かぶように、個性豊で丁寧な音が連なる。花などなくても一曲毎に、ステージに異なる素敵なリトルピアニストの花が咲いていたように思えた。シルバーエイジの、そしてリトルピアニストたちのつどいは、まさに、智恵先生の集大成という思いを強くする。
 いつか先生に伺ったことがある。 「どうしたら、先生のように... 」と。答えて下さったのは、「強くなることね。それは自分の弱さを知ること。そして積み重ねですね。」だった。とても重い言葉だった。口にすることは簡単だが、智恵先生のそれには,緻密な研究、確かな実績、そこから生まれた自信、そして何より、人に対するほんとうの大きな優しさと、深い愛情に裏付けされていると思う。私とあまり年齢が変わらないのにと、いろいろと悩んだり、落ち込んだこともあるが、ピアノを教えること、いえ一緒に学び成長することに、益々魅力を感じること、そして、私なりに一生懸命やってきたことを大切にしつつ、歩んでいけばいいのだと思うようになった。
 今は智恵先生に、そして、先生を通して、同じ思いのお仲間に出会えた事に心から感謝しています。
 智恵先生、皆様、これからもどうぞよろしくお願いいたします。
(和歌山県橋本市 M.Y.)




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