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「ちえの輪倶楽部」は、音楽教育家・北村智恵を中心とした、ピアノ指導者サークルです。
音楽セミナーやイベント、コンサートを企画・運営、またピアノ指導者のネットワークづくりを行っています。

使っています!

つまづいたのはだぁれ?

 ひかりちゃんは、去年の夏から私の教室に通い始めた保育園年長組の女の子だ。あともう少しで、ちえ先生の「ピーターラビットピアノの本」が出版されるとわかっていたので、私はどうしてもそれを使いたくて、本が出るまで「わくわくおんがくワーク」で導入部分を進めておくことにした。
 ひかりちゃんは私の言うことをよく理解し、全音符を書かせても色をぬらせても仕事が早かった。また歌が大好きで、音感もとても良かった。保育園で習った歌や童謡を弾きたがり、お母さんに教えてもらったり、自分で音を探ったりして楽しんでいた。もちろん、鍵盤のドレミファソラシドもとっくに知っていた。
 そして9月、待ちに待った「ピーターラビット ピアノの本」が私たちの手元にも届いた。
 「かわいい...。」
 ひかりちゃんは嬉しそうにパラパラと本をめくった。
 この本はほんとうに、生徒にも指導者にも親切で、ページをめくるごとにひとつだけ新しいことを学べる。他のテキストだと新しい音とスタッカートやレガート等の基本的なタッチが一度にでてきたりして、とりあえず音を正しく読むということにばかり一生懸命になってしまい、聴こえてくる音は二の次になりがちだが、このテキストは絶対にそんなことは起こらないように編まれている。ちえ先生がいつもおっしゃっている 「譜読みは少なく課題は多く」が、そのまま本になっているのだ。
 実際に使い始めてみると、ひかりちゃんは、なかなか順調な進み具合だ。まん中の ド は左右ともバッチリ。 「4分休符」だってすぐに覚えたし、ト音記号のレ(右手)と 、ヘ音記号のシ(左手)も、何とかクリアした。マルカート・スタッカート・レガートは、名前を覚えるのに時間がかかったが、耳では確実にその違いを聴き分けることができた。
 ところが、12曲目の 「あっおともだち!」で、ヘ音記号の上第2間の レ(左手)が出てくると、彼女は立ち往生してしまった。今まで右手で弾くものと思っていた レ の鍵盤を左手で弾かなければならないし、その音符が示す音が、ト音記号のレ と同じ音・同じ鍵盤ということがのみこめないようである。2週間経ち、3週間が過ぎても、ちっとも前に進めない。
 「あのね、ト音記号のド とヘ音記号のド と同じ鍵盤を弾いていたでしょ。それと一緒で、ト音記号のレ とヘ音記号のレ も同じ レ の鍵盤なのよ。わかる? 」と何度言っても、「うん、わかった」と返事はしてくれるが、 シ の音を弾いてしまうか、あるいは右手で レ を弾いてしまうかのどちらかなのである。
 あせるばかりで自分で解決できない私はちえ先生のご自宅でのセミナーを受講した後思い切って先生に助けを求めてみた。
 先生はその場ですぐに、「加線の意味がきちんと教えられていないんじゃない?」と、アドヴァイスしてくださった。
 あぁそうか、そう言われてみれば、同じ レ の音だということばかりに気をとられて、加線の話はしていなかった ... 。私は試しに、ひかりちゃんに聞いてみた。
 「ねえ、どうしてこの音 シ だと思うの?」 すると彼女は申し訳なさそうにもじもじしながら、
 「だってこのたま線の上にのってるもん。」
 ...... やっぱり。ト音記号のレ は線の下、ヘ音記号のシは線の上に音符のたまがある。もう、私ったら何年ピアノ教えてるんだろう。悪いのは、ひかりちゃんじゃなくて私なのに、と自分に腹を立てながら、彼女にごめんねと言うしかなかった。指導のポイントとして見出しにあげられていることに忠実に、レッスンを進めればよかったのだ。
 加線についてかみくだいて説明すると、ひかりちゃんは左手の1の指でそーっと レ の音を弾いてくれた。
 今回のことでは、相手が小さい子だから、と、見くびって理屈を抜いて、覚え込ませようとしたことを大いに反省した。小さい子だからこそ、きちんと丁寧に筋道を立てて教えてゆかなければいけないのだ。意味を知らずに丸暗記すると、たとえその時は何とかやり過ごせても、後で応用がきかずに困ることになるだろう。ひかりちゃんはそのことを未然に防ぐよう、気付かせてくれた。
 「まだまだ未熟な先生だけど、これからもよろしくね 」という思いで、いっぱいになった。
(京都府相楽郡 H.S.)



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