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「そう言えば、昔、お正月って、静かだったよなァ、シーンとしていて、時折、外で遊んでいる子どもらの声がきこえてくるくらいで、強い風が吹くと電線が唸るようにごうごう鳴ってたなァ。うん、正月は静かで寒かった」― 難病を発症し入院先で亡くなった幼馴染みの親友が、入院前の、まだ何とか自分で歩けて我が家へ食事をしに来れた最後の日に、私に話した言葉です。彼が還暦を迎えてすぐ旅立つまでの五十数年間、私にとっては結婚後もお互いに家族ぐるみで親しく仲良く時を共に過ごしてきた仲間であり、大好きな友達であり、中学以降、学校も仕事も趣味も、何から何まで全く別べつで、お互いの家を行き来する以外殆ど会うこともなく、お互いの動向もまったく判らないまま、たまに会うと、いつも一緒にいたかの如く「事後報告」の続きから話ができる相手でした。共通のものと言えば、小学校を卒業するまでの数年間、学校や近所で一緒に遊んだことや、同じ景色を見、同じ音を聴き、同じ情景の中で思ったり感じたりしたことを互いに言葉にしただけの間柄でした。お正月の静けさの中で、まだ追い羽根をついていた時代の、羽子板に当たるそのカーンという音が耳にも心にも残っていることを互いに信じているというだけのことです。夏休みの炎天下、背の高い向日葵を下から見上げて、花の裏側の絵を描いていた私に変な絵と言わず「おもろい絵やん」と言ってくれたり、彼が、オジサンに買ってもらったというカメラでカミキリムシの足だけ写真に撮って私に見せたとき、私が「カミキリムシ!」と当てたことを大喜びしてくれた、そんな日々が確かに在ったというだけで、私達はずっと親友でいられたのでした。
大晦日になると毎年、NHKの「ゆく年くる年」の生中継を撮影していた彼のことを思い出します。深山に囲まれたお寺の除夜の鐘の音色を伝える仕事も彼にぴったりの人生だったと思います。
さて今年はどんな人に出会い、どんな人との別れが待ち受けているのか誰にも判りません。せめて私達は、今年も日々、丁寧に誠実に生きたいものだと思います。
本年もどうぞよろしくお願い致します。
2026年新春
心から。北村智恵

for piano teachers
音楽教育家・北村智恵先生の
音楽教育理念に賛同し、
共感と応援の輪を広げる
ピアノ指導者のサークルです。







